いじめのその先
近づくと見に耐えられない光景があった。
咲斗さんが咲枝に暴力を振るっていた。
「何してるんですか!?」
反射的にそう叫び、咲枝を庇うよう二人の間に入った。
「空…也君。」
咲枝は腫らしている頬を抑えながら、涙目で僕を見た。そして小さく震えていた。
咲斗さんを見ると、先程の表情とは打って変わり、イライラしている様なすごい形相でこちらを見た。そして軽く息を吐くと呆れ声を発した。
「月島君。君は戻っててと言わなかったかい?」
「言われました。でも…嫌な予感がしたので戻って来ました。」
淡々と口にすると今度は咲枝が顔を伏せながら言葉を紡いだ。
「…やっぱり空也君は向こうに行ってて…。」
「え?」
「私達に関わって来ないで!」
唐突にそう言われ、一瞬固まったが咲枝の涙を見てすぐにそれは解かれた。
「嫌だ。」
気付けば自分の身体から声が出ていた。
「そんなこと言うなよ。頼りないかもしれないけど…少しでも頼れよ。」
そう口にすると咲枝の瞳が揺れた気がした。