いじめのその先
「…ここからは皆が知ってる通りだ。」
空也君は話始めと同じ様に息を吐き、呟いた。
私達は静まり返った空気の中に居た。
誰もが口にしたくても出来ない状況だった。
「それ…マジかよ。」
始めに声を上げたのは佐々木君だ。
「じゃあ今まで咲枝は…」
「嘘…付いてたの?」
佐々木君の言葉を繋げる様に、紗羅ちゃんも声を出した。
その言葉にみんな心を痛め、泣き出す人も居た。
今までやって来た『いじめ』と言う名の復讐は、今のみんなには重過ぎたから。
「どうしてなんだろう…」
私が不意に呟いた言葉に一斉に皆は私を見た。
「どうして咲枝ちゃんはそこまでするんだろう。一言でも私達に言ってくれれば、こんなことにはならなかったのに…。」
「それはきっと…」
幸恵ちゃんは何か言いかけて途中で口を閉ざしてしまった。
「幸恵…知ってることあるなら今更言わないのはなしだぜ。」
「うん。……あの…咲枝はきっとお兄さんのことがあるから言えないんだと思う。」
「お兄さんって…暴力振るう様な奴だぞ!?そんな奴に構うもんか!」
「智一…落ち着け。」
急に熱が入った立川君を冷静に村井君が止めた。
「幸恵…話続けて。」
村井君は冷静なまま幸恵ちゃんに話しかけた。
「うん…。前に一度だけ聞いたことがあるの。お兄ちゃんのことは私や周りが原因だから、私が我慢すれば良いって…。」
「我慢…?」
「うん。その時は分からなかったけど…多分それって空也君が言ってる暴力のことだと思う。」
「…」
みんな再び黙ってしまった。きっと誰もが沈んだ顔をしているだろう、この重たい空気の中で。