いじめのその先
再び手摺りに手を付き、空を仰いだ。青く染まった空にときおり風が吹いている。
そんな風に気持ちを落ち着かせながら、再びゆきに向かって心の中で解いてみた。
「そいつはダチなのか?」
「へ?」
ふいに月島君が聞いて来た。自分でも間抜けの声を出してしまったと後悔した。
しかし『後悔先に立たず』と言ったところ。月島君はまるで笑いを堪える様に聞いてきた。
「…んで、どうなんだよ?」
「そう…だね。友達よりは親友に近いかも。1番の仲良しだったから。」
「だった…か。」
「…うん。」
それ以降黙ってしまった月島君を横目に見ながら、私は咲枝ちゃんのことを考えていた。
お兄さんのことはどうにかしたかった。きっとその人のせいで誤解が生まれ、クラスであんなことが起きてしまったから。
「お前は咲枝のことどう思う?」
月島君っていつも唐突だな。そんなことを微かに思いながら、彼の質問に答える。
「どうって?」
「あ~だから助けるかどうか。」
「そりゃあもちろん…」
『助ける』
そう言いたかったが私はためらってしまった。それは以前咲枝ちゃんから言われたから。
「これ以上関わらないで。」
それは私を巻き込みたくなかっただけ。そう思いたいのに咲枝ちゃんの姿がゆきと重なる。
きっと私が余計なことしなければゆきは助かったかも…。
そう思うと『助ける』の一言が言えなくなってしまう。
「ーい」
ゆき…
「おいっ!!」
誰かの声でハッとして顔を上げると、月島君が心配そうな顔で私を見ていた。
「あ…」
「急にどうした?大丈夫か?」
「あぁ…うん。」
曖昧に返事する私に、彼は怪訝そうな顔で、しかしどこかホッとする様な表情をして正面の空を見上げた。