いじめのその先
「お兄ちゃん♪和英辞典貸してくれない?」
課題があった私はお兄ちゃんに和英辞典を借りようと部屋に訪れた。
机に向かって勉強していた彼はいらついた口調で怒鳴りつけた。
「勝手に借りろよ!んなこといちいち言ってくるな。」
「ごめん。じゃあ…借りるね。」
「あぁ。」
「…ねぇお兄ちゃん。余計かもしれないけど、あんまり頑張り過ぎない方が良いよ?お兄ちゃんは私と違って期待されてるかもしれない。でも体調とか…」
「…よ」
「え…?」
「お前に何が分かるんだよ!お前なんかには俺の気持ちは分からねぇよ!」
「お兄…」
バシッ!!
鈍い音と頬に走る痛み。
叩かれたと自覚したのは数秒経った後だった。
「…」
私は何がどうなったのか分からず、ただ呆然としていた。
そんな私に畳み掛けるように、お兄ちゃんは静かに怒った。
「咲枝、お前俺と同じ学級委員になったからって調子にのるなよ。」
私は何も言えず、ただお兄ちゃんの顔を見た。
お兄ちゃんの目に映った私はどんな顔をしていだろう。
怯え泣きそうな顔か、もしくは目を見開いた驚き顔か…いずれにしろ不安な顔に間違いない。
そうして仲良し兄妹だった私達は居なくなった。