いじめのその先
それから私は身体に痣を作るようになった。
母子家庭だけあって、家庭や近所付き合いに必死だった母は私達の様子に気付く予知もなかった。
そして私は自然と周りと距離を置くことにした。
お兄ちゃんがイライラしている今、クラスメートや友達にも被害が及ぶ可能性があると思ったからだ。
不審に思った親友の幸恵とかから何かあったか聞かれたが、私は笑ってごまかした。
『巻き込みたくない』
その一心があったから。
でもそれは甘かった。巻き込んでしまったんだ。
大切な友達を…。
「空也君…」
そう呟き、降下に広がる海を見渡した。
あの日と同じ崖の上から海を見ている。
遠くで子どもの声と、カモメの鳴き声がコーラスするように交じり合う。
潮の香りとゆらゆら揺れている波に向かって、決心する様に再び声を上げた。
「空也君、それにみんな…ごめんね。もう二度と巻き込まないから。」
「…ごめんね…。」
それはやがて涙声へと変わり、静かな海へと消えていった。