いじめのその先
説得
私達は揃って咲枝ちゃんの家に行った。正直、ここに咲斗さんが居るとは限らないが、それに懸ける様に空也君が呼び鈴に手を伸ばした。
家中に鳴り響くベルの音に耳を澄まし、待ってみるもドアが開く様子はなかった。
「誰も出ないな。」
「うん。居ないのかな…?」
月島君が、続いて幸恵ちゃんがそれぞれ呟いた。
それに合わせる様に私達はお互い顔を合わせた。
何分ぐらいの沈黙だろう…しばらく経った頃後ろから声が聞こえた。
「うちに何か用?」
振り返ると制服を着た、男子生徒が立っていた。
よく見るとお兄ちゃんと同じ制服の様だった。
この人もしかして…ちらりと空也君を横目で見ると、男子高校生を睨んでる表情をしていた。
「君は確か…」
彼も空也君を見つけたらしく、言葉を紡いだ。
しかしそれ以降は何かを言うことなく言葉を探しているように空也君を見つめていた。
やがてため息をつくと微笑みながら口を開いた。
「月島…空也君だったよね?久しぶり。海で会ったきりだからー半年以上は経ってるよね。」
「…久しぶりです。咲斗さん。」
空也君は睨みながらも口元に笑みを浮かべて口を開いた。
咲斗さんは相変わらず微笑みながら、私達をぐるりと見渡した。
「それで、クラスの皆さんも揃って何の用かな?」
私が用を言おうと口を開きかけた時、何かを思いついた様に咲斗さんは再び声を出した。
「あ、もしかして咲枝かな?残念だけど咲枝なら朝から出かけてね。」
そりゃあそう来るよね。
私は心の中でそう思っていた。こうクラスメートで来ると普通は咲枝ちゃんに用だと思うものだ。