いじめのその先
「どうしたの?みんなして…」
そう言うと私達の顔を見回した。
「ちょっと用があったんだ。ね、みんな?」
空也君の言葉が合図みたいに、みんなそれぞれ頷き合った。
「用…?」
「そう。でももう済んだみたいだから、家に入ろうか。」
咲枝ちゃんの疑問に答えたのは咲斗さんだった。
出遅れながらも咲斗さんから真実を話してほしいと思い、必死に止めた。
「ちょっと待って下さい!話はまだ…」
「いや。咲斗さんから聞くことはありません。」
私の叫びを止め、思いがけない言葉を発したのは月島家の兄、星也君だ。
「どうして?」
「これで良い。」
不満そうな私に、何を考えたのか冷静に言うと咲枝ちゃんの方へ向き直った。
「咲枝、お前にも話があるんだ。ちょっと良いか?」
「え…うん。」
はてなマークを頭に浮かべた咲枝ちゃんは、気の抜けた返事をすると、中へ入る様にと目配せをした。
それに対して軽く首を横に振った星也君は、咲斗さんを少し気にしながら口を開いた。
「ここじゃなくて、違う場所で話さないか?」
「違う場所…?」
「あぁ。…少し距離があるんだが一緒に来てくれるか?」
「良いけど…。」
「咲斗さんも少し咲枝借りますよ?」
「咲枝が行くと言うなら止めはしない。咲枝、帰り遅くなるなよ。」
「うん。行って来ます。」
星也君が咲枝ちゃんを連れだって歩きだすと、なんとなく皆もそれにつられて歩き始めた。
咲斗さんの様子が気になった私は最後にちらりと彼の顔を見てから、皆の列へと軽く小走りで付いて行った。