いじめのその先
「ふぅ~。けっこう広いとこだな…。」
一通り見終わった頃には休み時間終わり20分前 だった。
「あ、いけない!!お弁当食べなきゃ。」
どこで食べようか廊下をうろうろしていた目先 に階段とひとつの大きな扉を見付けた。 立入禁止などの看板がないことを確認し、その 扉を少し開けて見てみる。
「…あ、ここ屋上?」
小さく開いたドアの隙間から見えたのは広々と したコンクリートと空、そして手摺りから見え る町の景色だった。
「すご~い!!こんなとこあるんだ♪」
感動で我を忘れていた私は、ドアを全開にして その広々とした世界に飛び出した。
自分の背より10㎝ぐらい低い手摺りにしがみつ き、夢ヶ丘の町並みを見下ろした。時折吹く風 が長い髪を揺らした。
「せっかくだしここでお弁当食べよ♪………き ゃっ!?」
急に小さな悲鳴を上げた目先には、先程前の席 になったクラスメートの『飯田 咲枝(いいだ さ きえ)』が居たのだ。
「………」
「あ…えっと―ごめんね。驚いちゃって!!」
「………」
「前の席の…飯田さんだっけ?改めて相原千南 です。よろしくね♪」
「………」
「こんなところで何してたの?」
「………」
「…てかここって気持ちいいね♪町並みも綺麗 だし!!」
「………」
「……あ、もしかして食事中だった!?邪魔―し ちゃったかな?(笑)」
「………」
「えっと…飯田さん?…あ、ちょっと―」
明るく努めてたつもりでも返答もせず、無言で 立ち去ってしまった。
「な、何だったんだろう?」
わけが分からないが、今は残り少ない時間に追わわれて、お弁当を食べ始めた。