極悪兎甘い牙を向く

作業員の人かなぁ?
大変そう。

ふいにその人がこっちを見た。
帽子で顔は見えなかったけど
なんでだろう?
すごく懐かしくて
心臓が高鳴った。

ほんの一瞬の出来事なのに
とても長い時間に思えた。

入学式中も
さっきのことが頭を巡って
全然集中できなかった。

ふと昔のことを思い出した。
にぃたちがまだチームを組んでいた時のことを…

―4年前

「ラビ!!」

麟のことを名字の兎を文字って
ラビと呼んでいた。

「おう、チビ助またきてんのかー?
飴食うか?」

棒つきのキャンディーを
私に差し出すラビ。
私にくれるのはいつもラムネ味。
初めて会ったときに
私の目の色と同じだからってくれてから
いつもキャンディーはラムネ味をくれる。


「ありがとー!
ラビのは何味?」


キャンディーの包みを剥がしながら
ラビを見上げると
満面の笑みで私を見た。


「抹茶!」

「げぇー!じーちゃんみたいだなぁ!」

蒼斗が眉間にしわをよせながら
ラビを見つめた。

「てかぁ~、麟ちゃんって駄菓子屋のおばぁちゃんとマブダチなんだもんねー?
お茶のみ友達だったりして~?」


にこにこと笑いながら私と蒼斗の間にしゃがみこんでラビを見上げる眞登。


「お里ちゃんはいい人だぞ!」


眞登と蒼斗にも
キャンディーを差し出すラビの頬が少し赤く染まった。

お里ちゃんは
駄菓子屋のおばぁちゃんのことで
ラビはよくおばぁちゃんのとこに通って、普段は見せないような嬉しそうな顔で話してるのを見かける。


お里ちゃんいいなぁー…


「麟ちゃんはお里ちゃん一筋だもんねー!
俺は葵ちゃん一筋だけどー♪」


眞登っちは出会った頃は
女の子遊びがひどかったのに
ある日突然ぱったりと
女の子と遊ばなくなった。

それからは
よく家に来るようになって
いつも側にいる気がする。


「そんなんじゃねぇよ」


ふいと顔を背けるラビ。
さっきまで私を見てたのに
なんでか
胸がぎゅっと締め付けられた。


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