サマーバレンタイン【短編】
ほっと胸をなで下ろしたのも束の間、

「ところでさっきから気になってたんだけど、その大事そうに抱きかかえてんの、何?」


私ははっとして、腕の中でくしゃくしゃになった紙袋を、そろそろと右手に持ち直した。

「こ、これは、別に…」


私がもごもごしていると、田中くんがひょいっと紙袋の中を覗きこんだ。

「何かのプレゼント?」



田中くんのその何気ない言動に、私は自分の体じゅうがかっと熱くなるのが分かった。


私は衝動的に、目の前にいる田中くんめがけてチョコレートの入った紙袋を投げつけた。


「うぐっ…」

紙袋が田中くんの顔面に直撃し、袋からはじき出されたチョコレートが足元に散らばった。
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