サマーバレンタイン【短編】
私が何か言い出すのを待っているのだろう。

私は覚悟を決めて口を開いた。


「私、中学からずっと好きな人がいたの。

でもね、今までまともに話せたことないんだ。

そんなだから、告白どころか友達にもなれないまま、気がついたら3年経ってた。

紙袋の中身はね、一度も渡せなかった3年分のバレンタインチョコレート」


いつの間にか、田中くんはこちらを向いて黙って話を聞いていた。

彼の目を見て話す勇気のなかった私は、膝に顎を乗せ、水面に映る歪んだ満月を見て話を続けた。
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