サマーバレンタイン【短編】
「その人に彼女ができたの。

だから、今までどうすることもできなかった3年分のチョコレート、

全部食べて自分の気持ちを消化しようと思った。

でもね、自分の部屋にいると色んなこと思い出して、決意が揺らいで全然実行できなくて……

ちょっとした思いつきで公園に行ったら田中くんがいたの」

「うん」


「自分の心の奥の一番見られたくない部分を覗かれたみたいで、すごく恥ずかしくなった。

めちゃくちゃ動揺して、気がついたら私、田中くんにチョコレート押し付けて逃げてた」

「…うん」


「ごめんね」

「……うん」


私が話し終えて黙ると、田中くんは静かな川の流れに視線を移した。


私の中でうじうじと滞っているこの気持ちも、一緒に流れてしまえばいいのに。
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