サマーバレンタイン【短編】
透明な丸いケースの中に詰め込んだ数種類のトリュフは、数々の乱暴な扱いを受けたことで、溶けたり割れたりしてどれも原形を留めていなかった。


私は一番大きなかけらを口に入れた。

ビターチョコが舌の上でゆっくりと溶け、甘い香りとほろ苦い味が口の中いっぱいに広がった。


ボロボロなのに美味しかった。

今年こそ渡す!って、いつも以上に気合いを入れて3回も作り直したものだから不味いと困るけど。


私は口の中のほろ苦い余韻を飲み込むと、再び話し始めた。
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