サマーバレンタイン【短編】
私は、他のノイズに混じって途切れ途切れに聞こえてくる彼らの会話に耳をすませた。

ドキドキしながら盛り上がっている会話の内容を拾いあげた瞬間、私は頭からつま先にかけて、

ぐさりと稲妻がつき刺さったかのような衝撃を受け、目の前が真っ暗になった。


先週、山本くんが隣のクラスの女の子に告白され、付き合い始めたという信じたくない内容だったから。
 

山本くんはそのことをネタに冷やかされ、照れ隠しで怒っているのだった。

怒っているけど本気じゃない。だって目が笑っている。


幸せそうな山本くんがそこにいた。


呆然としている私を、心配そうに見つめる友達の表情が目の端に映った。

さっきまでの楽しい雰囲気を壊したくなくて、「平気」って笑ってみせたけど、上手く笑えてるか自信はなかった。
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