サマーバレンタイン【短編】
私はそれをごまかすように、残り1つとなったチョコレートを紙袋から取り出し、ラッピングを解いた。

私が初めて作ったバレンタインのチョコレート。

溶かして固めただけの、小さなハートがたくさんのチョコレート。


これで最後……もう少しでこの時間が終わってしまうんだと思うと、急に名残り惜しくなって、

わざとのろのろチョコレートを食べていたら、溶けだしたチョコレートで指先と口元がベタベタになった。


田中くんの方を見るとぱっと目が合い、チョコレートまみれのお互いの顔を見て笑い合った。


チョコレートの食べ過ぎで胸焼けがしたけど、田中くんは私が最後のひとかけらを食べ終えるまで付き合ってくれた。



こうして3年分のチョコレートを全て食べ終えたとき、私は、ほんの少しだけなら田中くんがお腹を壊してもいいなと思った。



夏休みが、始まる。


-- END --
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