サマーバレンタイン【短編】
その後のことは何も覚えていない。

楽しみにしていた友達とした約束も、成績表の中身も、家まで帰ってきた道のりも。


私は突然突きつけられた現実を受け入れることができなかった。

今はまだ何も考えたくなくて、制服を脱ぎ捨てると頭から布団を被ってひたすら眠った。


私は夏休みのスタート地点で転倒し、再起不能に陥った。



7時頃ママに叩き起こされ、のろのろと夕食の席に着いた。

食欲なんて沸いてこない。

目の前にあるものを無理やり口の中に運んだけど、何を食べても味がしなかった。


ふと手元から顔を上げると、視界の中に白くて四角い冷蔵庫の姿が飛び込んできた。


チョコレート処分しなくちゃ……とぼんやり思った。
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