サマーバレンタイン【短編】
夕食の片付けを手伝った後、私は冷凍庫から全てのチョコレートを取り出した。

今までチョコレートが占領していたスペースがぽっかりと空き、ママの喜ぶ顔が目に浮かんだ。


こんな結末になるなんて。

ごめんねチョコレート。

私は小さくため息をつくと、チョコレートを抱えて2階にある自分の部屋に持って上がった。


今夜全部のチョコレートを食べて、山本くんへの気持ちを断ち切ろうと思った。

決意の固い今なら、それができそうな気がしたのに。


なのに、いざチョコレートを手に取ると、ラッピングを解く手が固まる。


諦めることを諦められない。

山本くんへの想が大きすぎて、途方に暮れる私がいた。
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