サマーバレンタイン【短編】
2.夜の公園
紺色に染まった夜の静かな住宅街を走り抜けると、児童公園の入り口が見えた。

公園からはご機嫌なアコースティックギターの音色と、男の子の歌声が聞こえてくる。


私は児童公園の入り口に着くと足を止め、はずむ息を整えた。

街灯の仄かな明かりを頼りに小さな公園の中をぐるりと見まわすと、

公園の中央にあるジャングルジムの天辺で、

気持ちよさそうにギターをかき鳴らす男の子の姿を見つけた。


――嫌な予感がした。

この声には聞き覚えがあった。


少しだけジャングルジムに近づき、月の光を背に逆光となっている男の子の姿を凝視した。


……予感的中。

歌声の主は同じクラスの田中くんだった。
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