サマーバレンタイン【短編】
田中くんとは1学期の間、ずっと隣の席同士だった。

彼はとても気さくで話しやすく、女友達とばかりいる私にしては珍しくよく話をする男の子だ。


他のクラスの子達とバンドを組んでいるからか、驚くほど顔が広い。

その上、かわいい顔だちをしているので、女子から結構人気があったりする。

 

演奏に夢中な田中くんに気づかれる前に、さっさとこの場から立ち去ろうと、そーっとジャングルジムに背を向けた。


その瞬間、ぴたりと演奏が止んだ。

「おーい、もしかして中川?」


恐る恐る振り返ると、ジャングルジムの天辺から、田中くんが私に向かって笑顔で手を振っていた。
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