カプチーノ·カシス
ブルーマウンテン


コポコポとコーヒーを抽出する音を聞きながら、あたしはあの人の大きな背中を眺める。

あなたが、欲しい。

そんな想いを視線に込めて、穴が空きそうなほどに見つめていると、彼は笑顔で振り向く。

あたしの想いに、気がついた……?


「武内さん、コーヒーが入ったよ」


そんなわけ、ないか。


「……はい」


あたしは落胆を隠して、スプーンとマグカップを手に彼のいる作業台の側まで近づく。


「今日は分かりやすいやつにしたつもりだけど」

「ヒント、言わないで下さいよ?」

「はいはい」


彼の淹れたコーヒーをスプーンですくって、一口だけ、けれど丁寧に味わう。

苦みとコク、酸味のどれも主張せずに柔らかく舌に染み込む。

そしてかすかに鼻に抜けるフローラル系の香り……これは。


「――ブルーマウンテン」

「さすが、正解」


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