カプチーノ·カシス


奥さんとはそんなに長い付き合いなんだ……それなのに、いつまでも仲が良いなんて。

普段、愛妻弁当を自慢したり嬉しそうに奥さんの話をする課長の姿を思い出し、ちくりと胸が痛む。

でも、奥さんしか知らないってことは、絶対に課長の中には自分でも気づいてない飢えた部分があるはず。

あたしがつつくなら、そこしかない。



「カラダを知ってるのも、奥さんだけ……ってことですよね?」



あたしの口から飛び出した大胆な質問に、課長はぽかんと口を開けて目をぱちくりさせている。

だけど、もう後には退けない。


「あたし……課長を喜ばせる自信があります。もしあたしに少しでも可能性があるなら、押し倒して、モノにして、知らない間にあたしの虜にして見せます」


きっぱり断ろうと思えばできるはずなのに、課長はそれをしない。

だったらあたしはそのわずかな隙を狙って、全力を尽くす。

今頃思い出したけど、これが本来の――肉食女子であるあたしの、攻め方だ。


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