カプチーノ·カシス


開発室を出ていく課長の背中を見送ると、あたしは袋の中を覗いてみる。

真ん中にブルーベリージャムがたっぷりと乗ったデニッシュ、温めたら美味しそうなクロックムッシュ…それに小さなポンデケージョが二つ。

自分は食べないのにこんなに買うなんて……そう思うと笑みがこぼれる。

せっかくだから頂こう。あたしはパンのお供にカフェオレを入れると、自分のデスクでパンにかぶりついた。


「……おいし」


それを食べながら、あたしはさっきの課長との会話を反芻する。


“会社を通りすぎるほどあたしのことで頭がいっぱいだった”

“このまま二人で居たらどうにかなりそう”


彼の言った台詞を思い出しては、いちいちにやける。

でも、しばらくするとそんな楽しい一人ランチに水を差す人物が、開発室に戻ってきた。


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