カプチーノ·カシス


「愛海ちゃん、まだここに居たの? ずっと席取っておいたのに来ないから外に食べに行ったのかと思った」


石原が、そう言いながら近づいてくる。


「あ、ごめん。……ハ、じゃなくて柏木さんは?」

「食堂で総務の女の子たちに捕まってる」

「……なるほどね」


その姿、簡単に想像できる……

あたしは石原の話を適当に受け流しながら、最後のパンを口に放り込む。


「そのパンって……」

「あ、課長にもらったの。買いすぎちゃったんだって」


嘘ではないけれど、大事なところをぼかして石原に伝えた。

石原はふうん、と気のない返事をしてからあたしにこんな質問を投げかけた。


「愛海ちゃん……もしかして課長に告白した?」


飲んでいたカフェオレが気管に入って、あたしは盛大にむせた。

コイツ、あたしの気持ち知って――!?


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