カプチーノ·カシス
「やっぱり、そうなんだ……」
あたしの動揺を見て肯定だと受け取ったらしい石原は、長い睫毛を伏せ、灰色の瞳を濁らせる。
「あんたには関係ないじゃん」
対石原用の可愛げのない声で、あたしはそう突き放した。
「付き合うの?」
石原はそれでもめげずに、さらに質問を続ける。
あたしは苛々して立ち上がり、カフェオレを飲んでいたカップを流しに置くと石原を正面から睨みつけた。
「だったら何? 人の恋にあれこれ口出さないで欲しいんだけど」
「……ごめん。でも課長には奥さんがいるんだよ? そんなの、幸せになれるわけない」
石原の言った教科書通りのアドバイスに、あたしは苦々しくため息をつく。