カプチーノ·カシス
「あたしの幸せはあんたが決めることじゃないでしょう? それにね、幸せになろうと思って課長に告白したわけじゃないの」
「……じゃあ、何のために」
「一緒に、堕ちるため」
そう言ってあたしは石原を見据えた。
そりゃあたしだってもちろん、課長に一番に愛されて、幸せになれたらいいとは思う。
だけど彼は妻子持ちで、家族を大事に思ってるってことは長年の片想いで痛いほど身に染みてる。
「愛海ちゃん……」
付き合えたとしても苦しいのはわかってる。
逢いたいときに逢えない、イベントごとは家族を優先される、人目につく場所でのデートはできない……
いわゆる、愛人の立場ってやつ。
――それでも、いいの。
「あたしは、課長と一緒に堕ちたい。あの人の腕に抱かれる権利を得られるなら、後ろ指さされる関係だって構わない」