カプチーノ·カシス
二人が開発室に戻ってきたのは、それから二十分後のことだった。
「ただいま。うわ、もうこんな時間か。柏木くんが来てくれなかったら俺死んでたな」
「出過ぎたことかとも思いましたけど、論より証拠かなと思って」
「うん、その通りだな。本当に助かった」
いつになく和やかに会話をしながらこちらに向かってくる二人を見る限り、会議は上手くいったみたいだけど……
どうしてあんなに時間がかかったのかが知りたくて、あたしは課長にのもとへ駆け寄った。
「どうでした? あのブレンド」
「通ったよ。“ロイヤルブレンド”って商品名で、来年度からの生産を目指すって」
「本当ですか! 良かった……!」
あたしの喜ぶ姿に課長は嬉しそうに目を細めたあと、ハルの方に向き直って言った。
「武内さんや石原を悲しませずに済んだのも、柏木くんのおかげだな。本当にありがとう」
「いや……そんな大したことは」