カプチーノ·カシス

◇柏木 晴斗side◇



「――柏木さん! やりすぎです!」


今頃大阪にいる二人のことを考えて上の空だった俺を現実に引き戻したのは、同僚の石原が慌てて叫ぶ声だった。

コンロの火にかけていた自家焙煎用の手網の中を覗くと、豆の色は黒褐色。

八段階の焙煎度のうち中間の、ハイローストを目指していたつもりだったがこれでは……


「イタリアンローストですね」

「……だな」


イタリアンロースト……それは最も深煎りの豆を指す。

色は黒く、苦みが強い。


まるで今の俺の感情。


< 113 / 349 >

この作品をシェア

pagetop