カプチーノ·カシス
「……なんだ? いきなりそんな強いの頼んで」
スッと通った鼻筋にずる賢そうな薄い唇。
つり気味の一重まぶたに引き立てられた、色気のある黒色の瞳。
今日も腹が立つくらい、コイツはいい男。
「寒いんだもの……体も、心も」
だからアンタに会いに来たのよ、と熱っぽい視線を送ると、彼はあざ笑うように鼻から息を漏らして、あたしの太股に冷たい手を滑らせた。
「今夜は一段といい顔だな。ついに振られたか? 妻子持ちに」
低くも高くもない、だけど耳の奥を痺れさせる艶っぽい声で、彼があたしに囁く。
その手はもどかしい程ゆっくり、あたしの足を行ったり来たり撫でる。
「まだよ。伝える勇気もないんだもの。ねぇ、今日は彼の話はしないで」
拗ねたように言って、あたしはいつのまにか目の前に出されていたギムレットをあおった。