カプチーノ·カシス
「……じゃあお望み通り、身体中俺で満たしてやるよ」
そんな一言を最後に、あたしたちはバーを出た。
外で手を繋いだり腕を組んだりはしない。
まるで他人同士のように少し距離を置いて歩き、ホテルに入って部屋の扉を閉めると同時に、ぶつかるように抱き合うのだ。
「……んっ……ハル……」
キスをしながら甘い声で、彼の名を呼ぶ。
名前と言っても彼の本名は知らない。
“ハル”というのは出会い系で彼が使っていた名前だ。
「今日はえらく積極的だな、ナミ」
あたしをベッドに倒したハルが、舌なめずりをしてあたしのカラダを見下ろす。
あたしは……マナミだから、ナミ。
そんな安直な偽名で出会い系に登録し、ハルと出逢った