カプチーノ·カシス


そんなの無視すれば良かったのに、俺は従順に洗面所でコップに水を汲み、ベッドの側まで行ってしまった。


「ありがとうございます……」


武内さんは気怠そうに体を起こし、手を伸ばしてきた。

当然水を受け取るものと思っていたのに、その手はコップを持つ俺の手をすり抜けて、俺の頬に添えられた。



「好きです、課長……」



彼女の瞬きも、唇の動きも、すべてがスローモーションのように感じた。

逃げようと思えばできるはずなのに……身動きがとれない。


それどころか俺は水の入ったコップを床に落とし、自由になった手で彼女の腰を抱き寄せると、吸いつくように彼女の唇を塞いだ。

理性はコップを落とした拍子に、どこかへ行ってしまった。



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