カプチーノ·カシス
俺の気が変わらないうちにと思ったのか、彼女は自分からブラウスのボタンに手を掛けた。
そして三つ目のボタンが外され下着のレースが覗いた瞬間、高ぶる俺の興奮を一気に醒まさせる音がした。
ポケットに入れていた携帯が鳴ったのだ。
「……ちょっと、ごめん」
彼女の上に跨りながら携帯のディスプレイを確認すると、さらに俺を冷静にさせる『自宅』という文字が表示されていた。
彼女の身体から退き一度咳払いをしてから、通話ボタンを押す。
「……もしもし?」
『あ、ごめんね。起きてた?』
明るい妻の声。
何も知らない彼女を思うと、胸が鈍く痛み出した。