カプチーノ·カシス
家に帰った僕はベッドの上に仰向けになり携帯を握りしめていた。
グリーンコーヒーのままだとしても。
いつかは砕けてしまう恋だとしても。
彼女に幸せになって欲しい――その気持ちだけは変わらない。
だから……
“あんたには関係ない、余計なお世話だ”
いくら本人にそんな風に罵られても、愛海ちゃんの課長への想いを成就させるわけにはいかないんだ。
「……そろそろ、かな」
仕事の後、愛海ちゃんと課長はお酒を飲んだに違いない。
そして、きっと今はホテルに着いている頃。
早すぎても効果はないだろうし、手遅れになってはもっとまずい。
電話一本で状況が変わってくれるかはわからないけど、課長は基本的に真面目なひとだ。
――僕はそれに賭けてみる。
震えそうな手で携帯を操作し電話帳を開くと、祈るような気持ちで通話ボタンを押し、僕は携帯をそっと耳に当てた。
気づいて下さい、課長。
あなたには、愛海ちゃんを幸せにできない。