カプチーノ·カシス
カプチーノ·カシス
再び鳴り響いた着信音に、あたしは神経を逆撫でされて眉根を寄せた。
―――今度は、誰?
どうして皆あたしの邪魔をするの?
課長は迷いながらも携帯を取り出し、ディスプレイを確認する。
「……石原? 仕事で何かあったのかな……」
一瞬で仕事脳に切り替わったらしい課長は、迷うことなくその電話に出た。
でも……あたしにはわかった。
仕事のことなんかじゃなく、あたし達を止めるために石原が電話してきたのだと。
「もしもし……ああ、お疲れ様」
……アイツは絶対に余計なことを言う。
それを思うと、課長から電話を取り上げてしまいたい気持ちに駆られる。
「え、今? 宿泊先のホテルだよ。……何言ってんだ。自分の部屋に決まってるだろう」
ほら、やっぱり。
どうやら探りを入れられているらしい課長は、動揺を隠しながら“自分の部屋にいる”と嘘をつく。
「確かにお酒は一緒に飲んだよ。だけど二人きりじゃないし、ただ話をしただけだ」
課長がいくら言っても、石原の追求は続いた。
「だから、武内さんは―――……え?」
課長の顔色が変わった。何を言われたのか知らないけど、あたしに背を向けて急に小声になる。