カプチーノ·カシス


だけど――……

あたしの決意は、翌朝見事に打ち砕かれてしまった。

着替えて、メイクをして、最後の仕上げにリップグロスを唇に乗せているときに部屋のチャイムが鳴った。

……課長?


ぱたぱたと絨毯の上を駆けてドアを開くと、やっぱり彼だった。

少し気まずそうにしながらも柔らかく微笑む姿に、あたしの胸はきゅんと音を立てる。


「おはようございます」

「おはよう。もう出れそう?」

「はい、ちょっと待ってて下さいね」


あたしは塗りかけだったグロスをたっぷり唇に乗せて鏡の中の自分に微笑みかけ、持ち物を確認すると部屋を出た。


「あの……今日はどこへ行くんですか?」

「そのことなんだけど……新幹線の時間を変えて、早めに向こうに戻ろうかと思ってる。お互い、その方がいいだろ?」



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