カプチーノ·カシス
「彼はもともと工場の焙煎課に居たから、商品の知識はあるし現場のことは俺たちよりも詳しい。うちの課にとって大きな戦力になってくれるはずだ」
にこにこ顔の課長。その素敵な笑顔にいつもなら見とれるんだけど、今はそれどころじゃなかった。
ハルが同じ会社の人間だったなんて―――。
あたしたちも工場に出向くことはよくある。
現場で作業している人はみんな異物混入を防ぐために帽子とマスクを着用していて、確かに顔なんてわからないけど……
あ、もしかしたらただの他人のそら似ってことも……
そんな思いつきで心を落ち着かせようとしたけど、写真の隣に綺麗な字で書いてある名前を目にしたら、一瞬でその可能性は頭の中から消え去った。