カプチーノ·カシス


きっとひどい顔なんだろう。課長は驚いた表情をしてすぐにあたしから目をそらした。

その仕草にあたしの胸は、また傷ついた。


「課長、あたしこんな顔じゃ新幹線乗れないので、先に帰って下さい。一人の方が気楽でしょう?」

「別に、そんなこと……」

「いいんです。あたしまだ泣き足りないし、一人でゆっくり考えながら帰りたいから」


課長は静かにため息をつき、いつの間にか手に持っていたビニール袋から何か取り出した。


「じゃあ、これ。新幹線の中で一緒に食べようと思って二人分買っちゃったから……」


差し出されたのは、駅弁だった。

あたしはそのパッケージを見た瞬間激しく腹が立った。

お弁当に対してではなく、今、それをあたしに差し出した課長の無神経さに、だ。


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