カプチーノ·カシス
気づいたら、あたしは走り出していた。改札を通って課長の下りてった階段を一段飛ばしに駆け下りる。
ホームに降り立つと、ちょうど課長が新幹線に乗り込むところだったのであたしは叫んだ。
「――課長!!」
彼はあたしの声に気づくと腕時計を確認し、小走りでこちらに近づいてきた。
――発車時刻まで、あと五分。
「どうしたの? やっぱりこの新幹線で一緒に――」
「帰らないで……!」
乱れる呼吸を抑えながら、あたしは懇願する。
「帰らないで……下さい……」
ここで別れたからといって、永遠に別れるわけじゃない。
週が明けたらまたいつも通り会社で顔を合わせるけれど……
それでも、あたしは引き留めずにはいられなかった。