カプチーノ·カシス
今日が何の日で、どうしてあたしはここに居るのか……
忘れるはずもないそれらの情報が頭の中から消え去ってしまうほど、あたしはハルとの行為に没頭し、熱い吐息で窓ガラスを曇らせた。
立っているのが限界になって膝を折ると、ハルはあたしを軽々とお姫様抱っこしてソファへ寝かせる。
「ベッドの方がいいか?」
「やだ、早く来て―――」
あたしの脚は、自動ドアみたいに勝手に開いてハルを求める。
再び繋がり合ったあたしたちの熱で、さっき零したカプチーノ・カシスが蒸発して良い香りを撒き散らした。
……ハルの想いを知って、それでもあたしは課長を好きで。
なのにこうして身体を重ねるあたしたちって、なんだか切ないね。
甘さと苦さの混じり合った香りはあたしにそんなことを思わせ、胸の奥を疼かせるのだった。