カプチーノ·カシス
「嬉しいです。あたしからは電話できないから」
『不自由な思いをさせてごめん。ところで、明日の朝少し早く出て来れないかな』
「……? 仕事ですか?」
『いや……』
課長はそれきり黙ってしまって、あたしは「もしもし?」と呼びかける。
『――逢いたいんだ。皆が来る前に二人だけで』
“逢いたい――――”
そのシンプルでストレートな言葉に、胸が心地よくきゅうと締め付けられた。
課長も、ちゃんとあたしに恋してる……そう思うと、自然とあたしの声は甘ったるくなる。
「逢って……キスしてくれますか?」
『勿論。……でも』
「でも?」
『その先は我慢しないとな。いくら何でも』
あたしは課長となら会社でもしたいのにな、なんて思ってから、でもそれは無理だということに気がついた。
この腰の怠さが、朝までに回復する自信はない。