カプチーノ·カシス
あんなに求め合ったのが嘘であるかのように、険悪な空気があたしたちの間に流れる。
あたしがそれを無視してわずかな隙間から逃げようとすると、ハルは強い力であたしの腕を引いた。
「……こっち向け」
その言葉には有無を言わさぬ迫力があり、あたしは仕方なく身体をハルの方に向け、顔を上げた。
怒っているような、それでいて泣き出しそうな瞳―――
それに捕らえられて身動きの取れなくなったあたしの顎をぐいと掴むと、ハルはいきなり深いキスを仕掛けてきた。
固く引き結んだはずの唇は熱い舌に簡単に割られ、あたしは思わずハルの肩をトントンと叩く。
「も、いい……でしょ? やめて……」
「駄目だ。お前も舌出せよ。……そしたら帰してやる」
本当……?
一刻も早く帰りたいあたしは、その悪魔の囁きに耳を貸して口を開いた。