カプチーノ·カシス
よく晴れた、でも冬らしく寒さが身に染みる朝だった。
あたしみたいな若手社員が定時より一時間も早く出勤するなんて珍しいことなのだろう、守衛さんの前を通ったときに「関心だねぇ」なんて言われてしまった。
まさかこれから逢引きなんです、なんて言えないし、あたしは微妙に微笑んでその場をやり過ごした。
建物の中に入ると、あたしは一目散に階段を駆け上がり、開発室のある三階を目指す。
きっと、課長はもう来てる……
連絡があったわけではないけど、あたしの直感がそう言っている。
扉の前に立ち、乱れた髪と呼吸を整えて静かにドアを開ける。
柔らかな朝の日差しが差し込む開発室で、課長はいつものように丁寧に、コーヒーを淹れていた。