カプチーノ·カシス
石原の、お母さんも……きっと、本気の恋だったから、後悔はないって、そう思えるんだ。
でも、石原自身は複雑だよね……?
子供である自分に罪はないのに、理不尽な体験をしてきたんだから。
「……上手く言えないけど、愛海ちゃんと課長も……僕にはわからない幸せを共有していて、それは他人が侵せないものなのかなって……思ったんだ」
「石、原……」
あたしは、その言葉に目を見開いた。
話の流れから、またあたしに不倫を止めるよう言ってくるものだとばかり思っていた。
自分はつらい思いをしてきたというのに、この罪深い恋を認めてくれるなんて……
「……なんてね。ちょっと格好つけすぎちゃった」
そう言って屈託なく笑う石原。
あたしは初めて、このどこまでも優しい男を格好いい奴だと思った。
「……で、前置きが長くなったんだけど、本題に入っていい?」
「え……? 話って今ので全部じゃないの?」
「うん。と、言っても結果はわかりきってるんだけどね」
“結果”………その言葉で、あたしは何を言われるのかわかった気がした。