カプチーノ·カシス
「とぼけるんじゃないわよ。イブの日に柏木さんのマンションに二人で入っていく姿を見た人が居るって、噂が流れてるんだからね?」
あたしの胸が、どくんと嫌な音を立てた。
まさか、あれを会社の人に見られていたなんて。
どうしよう……事実だから言い逃れできない。
「里沙……それ、誰から?」
「誰って、あたしは同じ人事の先輩から聞いたけど……先輩が誰から聞いたのかは知らない」
「そう………」
どこまで広まっているんだろう。
もしも課長の耳に入っていたら……
「なによ、付き合ってること周りには隠してるの?」
「……う、ん」
課長に片想いしていることは言えても、身体だけの関係を持つ相手がいることまでは、いくら里沙相手でも言えない。
決して誰にも話せない。