カプチーノ·カシス


始めは二人きりだった開発室にはすぐにハルと石原も出勤してきて、久しぶりにメンバー全員が揃った。


「……石原、お母さんは?」

「何とかまだ頑張ってる。僕はそばにいるって言ったのに、いい加減仕事行けってお尻叩かれちゃったんだ」

「……そっか」


大晦日以来すっかり打ち解けたあたしと石原が笑い合っていると、課長が前に立って朝礼を始めた。

先月のコーヒーの売り上げは上々で、今月もまた忙しくなること。それから四月に入る新入社員の情報などが伝えられた。


朝礼の後はいつものようにコーヒーの味当てがあって、課長が淹れたコーヒーが作業台で美味しそうな湯気を立てる。

里沙に言われた噂話は心に引っかかるけれど、仕事には手を抜けない。

あたしは不安を追い払うように、コーヒーの香りを胸一杯に吸い込んだ。


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