カプチーノ·カシス


納得できずに下唇を噛んでいると、頭にふわりと重みを感じた。

――ハルの手、だ。


「お前は間違っちゃいねぇよ、あのジャーマンは本当に出来損ないだ。誰がなんと言おうと」


そのままぽんぽんとあたしの頭を軽く叩くと、ハルは作業台に移動して今度は豆を計り始める。

久しぶりに優しくされたからか、ほわっと胸が温かくなるのを感じ、そして立川さんに対するもやもやした気持ちも、少しだけ落ち着いた。

また、ハルに助けられちゃった……

あたしはそう思いながらやかんの火を止め、ドリップポットにお湯を移す。


「……来たよ」


石原が怯えたように言うと、乱暴にドアが開かれた。

工場用の黄色い作業服を着た中年のオジサンが不機嫌そうにあたしたちを睨む。

……立川さん、だ。


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