カプチーノ·カシス


「……本当だったんだな、開発の柏木と武内がデキてるって」


嘲笑するように、立川さんが言った。

開発室の空気が、一気に凍り付く。


「コーヒー飲んでりゃいいお気楽部署は楽しそうだねぇ、俺も混ぜてくれよ」


この人……なんで、今そんな話……


「……立川さん、俺の部下を侮辱するのはやめて下さい。二人はいつも真面目に業務に取り組んでいます」


課長が庇ってくれるのは嬉しい。

嬉しいけれどその反面、ハルとの噂は根も葉もない、というわけじゃないから、ちくちくと胸が痛む。


「……ふん。でもうちの課に見かけた奴がいるんだよ。お前らが仲よーくマンションに入ってく姿。しかも、確かクリスマスイブの日だ」


やめて――! それ以上は……


「立川さん、続きは廊下で聞きます。みんなは仕事に戻っていい」


厳しい口調で言った課長は、立川さんの背中を無理矢理押しながら扉の外に出ていった。


どうしよう、課長にハルとのことが……


「……っ」


全身の力が抜け、あたしはその場にぺたんと座り込んだ。

目の前が真っ暗になって、指先が冷たくなっていく――。


「どういう……ことですか?」


石原の震える声が、静かな開発室でやけに大きく聞こえた。


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