カプチーノ·カシス
意味がわからないという風に、課長は眉根を寄せる。
それはある意味当然の反応かもしれないが……あなたにそんな顔をする権利はないはずだ。
「恋人同士じゃないのに一緒にいるのがそんなに不思議ですか? 課長だって、してるでしょう。奥さんいるのに、愛海と」
「……!? 柏木くん、どうして……」
俺が知っているなんて夢にも思わなかったんだろう。
あからさまに動揺した課長は、手に持っていた缶を地面に落とした。
「俺は、愛海が課長に片想いしているときからずっと……アイツのセフレでした。そしてその想いが実ってからも、変わらずアイツのそばにいて話を聞いてた」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。セフレって……」
「知らないんですか? 寂しいときに身体で慰め合う関係のことですよ」
「言葉の意味は、知ってるけど……」
課長の脳はカフェインが効かないほどに混乱しているらしい。
頭痛を堪えるように片手で頭を押さえ、彼は必死で何か考えている。