カプチーノ·カシス
「愛海ちゃん…とりあえず椅子に座ろう?」
愛海ちゃんは僕の言葉に反応を示さずに、さめざめと泣き続ける。
僕は無理矢理彼女を抱え上げると、引きずるようにデスクの所まで連れて行き椅子に座らせた。
「僕、ジャーマンの報告書を書くから……愛海ちゃんは休んでいて」
聞きたいことはたくさんあるけど、今の状態では無理だ。
柏木さんに言われたとおり残りの仕事を片づける……それが僕の役目なんだ、きっと。
現場はさっき生産を止めたジャーマンの処理をしてからまた新たに焙煎からやり直しになるので、幸い“飲む”仕事はなかった。
僕は愛海ちゃんの様子を窺いながら、報告書の作成とさっき作業台で使った器具の片づけをして二人の帰りを待った。