カプチーノ·カシス
先に戻ってきたのは課長だった。
無言でこちらに来て、愛海ちゃんの背中に一瞬だけ切なそうな視線を向け、僕の隣に座る。
「課長……これさっきの不良品の報告書です」
「……ああ、確認するよ」
報告書の文字を追うその横顔からは、感情が読みとれない。
これからどうするつもりなんだろう。
話し合って、別れるのか、それとも関係を続けるのか……
「石原」
「はい」
「特に不備はないからこれで提出しとく。俺はこれから不良品の廃棄作業を手伝いに現場に行ってくる。量が多いから定時までに戻れないかもしれない。そのときはみんな先に上がっていいから」
「……わかり、ました」
課長は愛海ちゃんの方を見ようとせず、足早に開発室を出ていく。
今日は話し合わないつもりなんだろうか。
このままじゃ、愛海ちゃんが可哀想すぎるよ……