カプチーノ·カシス
「やめて――っ!」
愛海ちゃんが椅子から立ち上がり、柏木さんの手からカップを奪おうとする。
でも柏木さんはひょい、とその手を高く上げてしまってそれを阻止した。
動きを止めて睨み合う二人を見ながら、僕はどっちの味方をするべきなのか迷った。
課長のことが好きな愛海ちゃん。
愛海ちゃんのことが好きな柏木さん。
二人とも真剣で、どっちの想いが上とか下とか、数値で計れるものでもない……
考えれば考えるほど袋小路に迷い込み、結局傍観することしかできない僕。
……やっぱり、情けない。
しばらくすると役立たずの僕の目に、愛海ちゃんが何かを決意したように、柏木さんを真っ直ぐ見つめる姿が映った。
「ちゃんと、課長と話すから……それで本当にあたしたちが駄目になってしまったら、そのときは、あたしが自分の手で、それを割る。だから……今はそのままにして置いて。お願い」